一人(いちにん)の僧侶になるために ~志経(墓前読経)導師編~
本山では、得度した僧侶、また本山の報恩行をなかなか勤しめない僧侶に対して、様々な儀式が執行できるように「各種儀式導師資格取得講座」が定期的に開講されています。
講座は、本山御堂にて開講されており、儀式の内容によって1日で終わる講座もあれば、5日間行われる講座もあります。講師は本山堂衆が直々に行い、声明作法だけでなく儀式の意味や僧侶の立ち振る舞い、また法話の仕方や話し方など、講義や練習だけでなく、実際に門徒から受けて行う各種儀式を実践して学べる特別講座です。
7月に行われたのが志経導師資格取得講座。この講座に、当学院初等科専修課程を合格修了し、先月本山にて得度し、僧侶となった5人の僧侶。また、なかなか遠方で本山の報恩行に勤しむことができず、志経導師資格を取得できていなかった1人の僧侶。合計6名の僧侶が受講いたしました。
講座では、浄土真宗ではどのような考え方でお墓参りをするのか。お墓とはどういう場所なのか。外墓(墓石の墓)と内墓(納骨御仏壇)の違いは何か。そこで勤める墓前勤行をなぜ志経というのかなど、儀式作法だけでなく、その意味、浄土真宗僧侶としての考え方や心構えなどを懇切丁寧に指導されていました。
儀式作法の指導を受けた際は、実際に本山の墓所(納骨御仏壇)で指導が行われ、講師の本山堂衆から「ここまで聞こえる声で」「お腹から声を出して」など、勤行集(お経の本)の節譜の扱い方や息継ぎの場所をあわせる以前に、自分自身の声が全く出ていないことに受講していた僧侶たちは驚き、「自分一人家で読んでいるときは大きな声が出ていると自負していたが、実践の場でお勤めすると、いかに自分の声が小さく、門徒の心に届かない声明になっていたかと気付かされた。」「普段学院の教室や自宅で読んでいるときと実践とではここまで感覚が違うものなのか」など、特別講座ならではの気づきのある学びとなっておられました。
その後も、繰り返し一人ずつ実践形式で研鑽が続き、徐々に慣れてきた僧侶たちは大きな声で厳かに志経(墓前勤行)を勤められるようになっておられました。
特別講座最終には、実際に門徒が願い出て勤める志経を受講する僧侶が導師として勤める試験が行われ、数時間前とは別人の如く、堂々と皆さん勤められておりました。
今回この講座を受講して、本山から志経導師として資格を許可されたのは5名。残る一人は惜しくも今回不合格になられましたが、次回は必ず合格できるぐらいの実力まで研鑽できるいい学びとなられておられました。
この後も、志経導師だけでなく、御移徙導師や、申経、葬儀式など様々な儀式の導師が勤められるよう、報恩行だけでなく、今回のような特別講座が本山にて開講されます。
在家から得度して僧侶となられた皆さんが、一人(いちにん)の僧侶となれるよう、本派並びに本山、及び別院が応援し続けてくださいます。